2017年10月31日火曜日

第192回 ~地域包括ケアとは~

2017年8月に地域包括ケア病棟運営に関する病院見学(石川県小松市)、10月には地域包括ケア実践研究会(三重県四日市市)への出張を拝命して行って来た。以下は2つの出張から学んだことの抜粋である。充分とはいえず、かつ不適切な表現もあるが、どうか一読くだされば幸いです。

(1)人口が横ばいで75歳以上が急増する大都市部、75歳以上人口の増加は緩やかだが人口は減少する町村部等、高齢化の進展状況には大きな地域格差が生じている。が、いずれも団塊の世代が75歳以上となる2025年を目途に、重度な要介助状態になっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けられることが望まれている。加えて老老介護・認認介護・8050問題・生活困窮者・待機児童・子育てなどの課題を抱えながらも、多くの人たちは地域で暮らしたいと思っている。

(2)こういった人たちを支えてゆくシステムとして、『丸ごと・我が事』の地域共生社会を基本コンセプトにした、地域包括ケアの実践が重要になる。住まい・医療・介護・予防・生活支援(ゴミ出し,掃除,買い物,調理,受診の付き添い,通院介助,移動支援,日常生活の手伝い,安否確認,趣味活動など)が一体的に提供できるシステムであり、地域の自主性や主体性に基づき、地域の特性に応じて作り上げてゆくことが大事。

(3)高齢者・障害者・子ども・現役世代、誰もが支援が必要になる可能性がある。地域は一つであるため、縦割りにせず横断的に『丸ごと・我が事』として受け止める。
そして、人口減少に備えて、支え合いの仕組み、つまり地域共生社会を目指す必要がある。

(4)医療の現場に求められる在宅ケアの基本条件は、
*不安なときは、いつでも相談できて、必要なとき必要なだけ医療を提供できる医師
がいてくれること。
*いつでも・必要なとき・必要な期間、入院できるベッドがあること。
*入院期間が長くなり、心身機能および生活の基盤が分断されないこと。その為に、なるべく早く退院できるよう関係各位との調整を早く展開すること。

(5)専門職がつくるパターナリズムへの疑問を常に持ち、自分の価値観・倫理観・生活観・死生観etcを押し付けないで、その人の生活の流儀を尊重しつつ介入してゆくこと。個別制度では十分に機能しない複合課題を抱えた人や家族等に対し、自分に出来ないことは地域のネットワークを通じて、出来る人(家族・友人・ご近所・老人会・民生児童委員・学校・後見人・弁護士・社協・宅配レンタル業者・ヘルパー・ケアマネ・介護事業所・福祉事務所・地域包括支援センターなどなど)に継げてゆくこと。そして、その人の役割づくりとともに社会的孤立を防ぐ仕組みが望まれる。

(6)自立の意味
 *私たちは様々なものに依存できていて、依存度が浅いからこそ、『自立』している
と勘違いしている。今の世の中は、ほとんどのものが一般人向けにデザインされて
いて、便利さが普通になっているが故に依存していることを忘れていて何も依存し
ていないという錯覚を起こしている。
 *高齢者は限られたものにしか依存できないので『自立』が難しいと思っているが、
依存できるものを増やして何にも依存していないと感じられる状態を作り出せば、『自立』という自覚になってゆくのではないか。


 少子高齢社会が急速に進行している現代は多種多様な課題があり、色んな制度やサービスが時代に合わなくなっている。既存の枠組みのなかで解決しにくい課題は、縦割りではなく横断的な繋がりが必要であることを痛感した。さらに無いものは地域ごとに創らねばならない時代のようである。地域包括ケアの深化および推進が始まる。

リハビリ室長 木村(理学療法士)